技術解説
細菌検査と位相差顕微鏡
高橋 昭三
1
1東大医学部細菌学教室
pp.207-210
発行日 1961年4月15日
Published Date 1961/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542905816
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
できてから何年かたつた検査科なら,大ていの細菌検査部門には位相差顕微鏡装置があるようである。これは使いだしたら止められないほど便利なものであるにもかかわらず,大ていの検査室ではお倉入りのようである。その理由は,一応使つてみるが思つたほど便利でない,とか,思つたほどみえない,ということのようである。それは誠にもつともな話であるが,誰も,メチレンブルーで,結核菌をそめ,ガフキー数をきめようとは考えない。しかし,最も多くの場合,メチレンブルーの単染色標本が一応用いられるのは,それによつて,かなりいろいろのことがわかるからである。位相差顕微鏡は,その性質,特性を知つて使えば,単油染色をし,浸鏡検を行う大部分の場合,それを省き得るであろう。又さらにそれよりも,多くのことを教えてくれることがおわかりになるのではないかと思う。むろん,これは極言であつて,単染色のよさは充分に認めねばならないが,それが絶対必要な場合は考えるよりも少い。何よりも,使いなれれば,時には,近視の人が,はじめて眼鏡をかけた時のことが,想像できるであろう。実際的には,位相差顕微鏡がどのような特性をもつかということが,比較的考えられておらず,高級な理論的考察がよく記載されている。私すなわち使用者が,細菌学を専攻する立場から位相差顕微鏡の使用法を考えてみたい。
Copyright © 1961, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.