技術解説
濾紙電気泳動法の実際(その2)—血清蛋白質の分画法を中心として
阿部 正和
1
1東京慈恵会医科大学杉本生理学教室
pp.211-215
発行日 1961年4月15日
Published Date 1961/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542905817
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6.濾紙電気泳動法の標準操作法
昭和32年の秋,電気泳動学会内に濾紙電気泳動標準操作法小委員会が設置された。それは,濾紙電気泳動法の操作が病院や研究所によつて,いろいろ相違し,お互いの分析結果を比較検討することのむずかしさがだんだんはっきりしてきたからであつた。チセリウス電気泳動装置がわが国に導入されるや否や,電気泳動学会は率先してまず電気泳動法標準操作法を設定し,全国の研究者がこれに従つて分析したので,お互いの分析結果を比較検討することが可能であつた。濾紙電気泳動法の場合もこれにならおうとしたのである。
小委員会で考えた濾紙電気泳動標準操作法は第3表に示す如くである。この案は第8回の電気泳動学会総会に於て発表7)されたのである。ところが,ここに驚くべき事実が現われてきた。東京都内の14ヵ所の研究施設にお願いして,同一の血清を試料として,この標準操作法に則つて濾紙電気泳動をして頂き,各自の研究室に備えつけられているデンシトメーターで各分画の定量を行ってもらつたところ,アルブミンの濃度比(%)の変動範囲(最大の%一最小の%)が20%以上もあつたのである。つまり,同じ血清でも,ある研究者はアルブミンが60%だといい,別の研究者は40%だというわけである。こんなに違つては,お互いの成績を比較検討することができるはずはない。
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