今月の主題 プリオン病とその診断
巻頭言
プリオン病診断技術の展開に期待する
毛利 資郎
1
Shirou MOHRI
1
1九州大学大学院医学研究院実験動物学
pp.1499-1500
発行日 2002年11月15日
Published Date 2002/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542905271
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成長ホルモン投与や硬膜移植によりヒトからヒトへ感染する医原性プリオン病が,大きな社会問題となったが,歴史的にみて,ヒトと動物のプリオン病の間に直接関連はないとされていた.しかしながら,1996年になって,いわゆる"狂牛病",牛海綿状脳症(Bovine spongiform encephalopathy;BSE)が人に感染し,変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(variant Creutzfeldt-JakobDisease;vCJD)を引き起こしたことが,英国で突然発表された.これによりプリオン病が新たに主要食物からヒトに感染することが示され,世界を震憾させた.その後,英国におけるvCJD患者は増え続け2002年7月末までに英国内だけで115名である.患者は英国滞在経験者など含めてフランス,アイルランド,イタリア,香港,カナダでも発見されている.感染源として可能性のあるBSE罹患牛も肉骨粉の輸出実績を追うようにヨーロッパを中心に拡大しており,ついに,日本でも2001年9月に千葉県で報告されて以来,4頭が発見されている(この原稿を書いた後5頭目が発見された).さらに,わが国では食の安全性に関する危機管理の脆弱さも浮き彫りにされ,日本中にプリオン病に対する不安が広がっている.
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