今月の主題 筋疾患
話題
蛋白質「分解」酵素の「異常」による筋ジストロフィー―カルパイノパチー
反町 洋之
1
Hiroyuki SORIMACHI
1
1東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命化学専攻生物機能開発化学研究室
キーワード:
カルパイン
,
コネクチン
,
カルシウム
,
MURF
,
p94
Keyword:
カルパイン
,
コネクチン
,
カルシウム
,
MURF
,
p94
pp.555-560
発行日 2002年5月15日
Published Date 2002/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542905107
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1.はじめに
今回特集されているように,筋ジストロフィーの責任遺伝子にコードされるものはほとんどが酵素活性をもたない構造蛋白質であり,膜の周辺に局在する分子である.それゆえ,肢帯型筋ジストロフィー2A型(カルパイノパチー)の責任遺伝子が,骨格筋特異的カルパインp941)(カルパイン3とも呼ばれる)の遺伝子CAPN3であるとBeckmann博士のグループによって1995年に報告されたこと2)は,大きな衝撃を持って迎えられた.カルパインという細胞質に存在する蛋白質切断酵素の遺伝子の欠損が他の筋ジストロフィー同様の症状を引き起こすという事実は,筋ジストロフィーの発症メカニズムに関して大きなパラダイムの変換を予感させるものであった.その後のBeckmann博士や埜中征哉博士をはじめとする日本のグループの臨床データの積み重ねにより,現在までに100以上の病原性変異がCAPN3遺伝子座に見いだされており,この遺伝子の欠損がカルパイノパチーを引き起こすことに現在では疑問をはさむ者はいない(図1参照)3~6).
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