今月の表紙 帰ってきた寄生虫シリーズ・21
自由生活性アメーバ
藤田 紘一郎
1
1東京医科歯科大学大学院国際環境寄生虫病学
pp.924-925
発行日 2001年9月15日
Published Date 2001/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542904850
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自然界の水や土壌中で自由生活をしているアメーバでヒトに病害性を示すものには,眼に寄生して角膜炎を起こすアカントアメーバと髄膜脳炎を起こすアメーバとがある.眼に寄生するアカントアメーバにはカステラーニアメーバ(Acanth-amoeba castellanii),多食アメーバ(A.polypha-ga)がある.日本では,1988年に初めてアカントアメーバ角膜炎患者が報告されて以来,ソフトコンタクトレンズの使用者増加に伴ってアカントアメーバ症患者も増加傾向にある.
アカントアメーバの生活環は,栄養型と嚢子(シスト)からなる.栄養型は20~30μmで胞体からトゲ状小突起(thorny spike)が出ている.シストは10~20μmの球形で,シストの外壁と内部の虫体の細胞膜が数か所で接近しているため,五角形の星状に見える(図1).アカントアメーバ角膜炎は,多数のアカントアメーバが角膜の微細な傷から侵入して発症する.症状としては,病巣部に淡い混濁,結膜毛様充血が見られ,強い眼痛を伴い,角膜輪部から角膜視神経にそって放射状角膜神経炎を認めることが多い.さらに,視力障害,虹彩炎を伴う角膜の混濁,浮腫,角膜の輪状潰瘍を示し,難治性である(図2,3).病変部の角膜掻爬・擦過物やコンタクトレンズ保存液から五角形の嚢子や栄養型を検出して診断する.
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