特集 細胞診―21世紀への展望
第5章 新技術・周辺領域技術の応用と展開
4.蛍光インサイツ-ハイブリダイゼーション(FISH)の細胞診への応用
松田 壯正
1
,
松田 真弓
2
Morimasa MATSUTA
1
,
Mayumi MATSUTA
2
1岩手医科大学産婦人科
2岩手医科大学皮膚科
pp.1434-1439
発行日 2000年10月30日
Published Date 2000/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542904597
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はじめに
生体はあらかじめプログラムされた塩基配列にしたがって蛋白を合成し,生命活動を営んでいる.この塩基配列が遺伝子であり,それらの集積したDNA鎖は分裂期では染色体として観察される.それ以外の時期では,染色体は凝縮し核として存在する.染色体の数は種によって決まっており,ヒトでは46本(常染色体22対および性染色体1対)で,先天性に染色体数が正常と異なる個体は身体的・知的障害を持つことが知られている.例えば,第18番染色体が3つ(18トリソミー)の新生児の寿命は約2年である.また,細胞は遺伝子を増幅することによって環境変化に対応することができると考えられるが,正常細胞がDNAを増幅することは不可能である.これに対して,癌細胞では癌遺伝子の増幅が検出され,遺伝子産物の過剰発現を引き起こす共通なメカニズムとして知られており,それが自律性の無制限な増殖を引き起こし結果として宿主であるヒトの命を奪う.
このように遺伝子および染色体の数や構造に異常がおきると正常とは異なる遺伝情報が伝えられ,多くの場合生体に不利益な出来事が起きる.したがって,先天性あるいは生後に生じた遺伝子異常により引き起こされたと考えられる疾患の病態理解には,遺伝子・染色体解析が必須である.
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