今月の表紙 帰ってきた寄生虫シリーズ・9
マラリア
藤田 紘一郎
1
1東京医科歯科大学大学院国際環境寄生虫病学
pp.930-931
発行日 2000年9月15日
Published Date 2000/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542904472
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近年,地球の温暖化に伴って熱帯地方を中心にマラリアが復活している.今後,地球の気温が2~3℃上昇すれば,日本の関東地方までがマラリアの流行地になるであろうと予測されている.現在,アフリカ,南米,東南アジアなどの熱帯・亜熱帯地域90か国で,世界人口の44%に相当する人々がマラリアの驚異にさらされ,年間3~5億人が発病し,150万~270万人が死亡していると推定されている.その復活の背景には,温暖化による環境変化のほか,薬剤耐性マラリアや殺虫剤耐性媒介蚊の出現,開発に伴う媒介蚊の生育環境の拡大と人口移動,マラリアに対する抗体を持たない人口の増加などが考えられている.
ヒトに寄生するマラリアには熱帯熱マラリアPlasmodium falciparum,三日熱マラリアP.vivak,四日熱マラリアP.malariae,卵形マラリアP.ovaleがある(図1~7).いずれもハマダラカの刺咬によって感染する.マラリア感染の特徴は間欠的な発熱,貧血,脾腫である.発熱はマラリアの赤血球内発育・分裂周期に一致して起こり,三日熱マラリアと卵形マラリアは48時間,四日熱マラリアは72時間,熱帯熱マラリアはおおよそ48時間ごとに熱発作を見る.しかし,熱帯熱マラリアを除いては致命的ではない.熱帯熱マラリアは,インフルエンザと誤診される例が多いが,強い病原性を示し,発症初期5病日以内に適切な治療を開始しないと1~2週間で,脳性マラリア,出血症状,神経症状,腎不全などを併発し死に至ることがある(図8).一方,三日熱マラリアと卵形マラリアは肝内休眠体を有しており,再発の原因となるため,根治療法が必要となる.
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