特集 昆虫などによる健康問題
【海外渡航者における昆虫による疾患と対策】
マラリア―マラリアは否定するのが難しい
松岡 裕之
1
1自治医科大学医学部感染・免疫学講座医動物学部門
キーワード:
血液塗抹標本
,
顕微鏡
,
ハマダラカ
,
熱帯病研究班
Keyword:
血液塗抹標本
,
顕微鏡
,
ハマダラカ
,
熱帯病研究班
pp.448-449
発行日 2009年6月15日
Published Date 2009/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414101709
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マラリアを診断する
マラリアを疑って検査すれば,マラリアを診断することはさほど難しくない.血液塗抹標本をつくり顕微鏡で赤血球を1万個も観察してみればよい.図1に示したようなマラリア原虫が見つかればたちまち診断は確定する.あるいはImmuno-Chromatography Test(ICT)でマラリア抗原を検出する,またはPolymerase Chain Reaction(PCR)でマラリア独自のDNAが増幅されれば診断に直結する.
教科書にはしばしば,マラリアの3大症状は発熱,貧血,脾腫とある.マラリアの流行地で調査をすると,たしかにこの3症状を備えた子どもたちがゾロゾロいる.彼らの多くは乳児の頃から繰り返しマラリアに罹っており,脾臓も大きいし,貧血もはなはだしい.ところがマラリア初感染では,まず倦怠感・発熱が先行する.生体が異物を認識し,感染赤血球を破壊しはじめるようになると脾臓が腫大する.脾臓は健常な赤血球も破壊するため顕著な貧血が現れてくる.マラリアに初めて罹った人が,すでにこの3大症状を呈していたなら,これはすでに深刻な病態に陥っているといわねばならない.
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