今月の表紙 帰ってきた寄生虫シリーズ・2
顎口虫
藤田 紘一郎
1
1東京医科歯科大学医学部医動物学
pp.120-121
発行日 2000年2月15日
Published Date 2000/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542904304
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顎口虫は野生動物の胃壁や食道壁に寄生している寄生虫で,ヒトを本来の宿主としないため,ヒトでは幼虫のまま体内を移行して種々の病変を起こす(幼虫移行症,larva migrans).1940~1960年ころにはライギョの生食による有棘顎口虫感染例がみられたが,その後の食生活の改善に伴って国内での感染はみられなくなった.ところが,1980年代に入って,九州,西日本を中心に輸入ドジョウのおどり喰いによる剛棘顎口虫の感染例,1985年には九州南部でヤマメなどの渓流魚の生食によると思われるドロレス顎口虫感染例,1988年には三重県下で日本産ドジョウの生食による日本顎口虫の感染例が相次いで報告された.現在でも散発的に報告がみられ,また,輸入感染症としても重要である.
国内でみられる顎口虫は,イヌ,ネコの胃壁に寄生する有棘顎口虫(Gnathstoma spiniger-um),イノシシの胃壁に寄生するドロレス顎口虫(G.doloresi),イタチの食道壁に寄生する日本顎口虫(G.nipponicum)と日本にはなく東南アジアのブタの胃壁に寄生する剛棘顎口虫(G.hispidum)の4種である.
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