特集 臨床検査の新しい展開―環境保全への挑戦
Ⅱ.環境問題と疾病
9.環境と放射能
2)放射線と甲状腺癌
難波 裕幸
1
,
山下 俊一
1
Hiroyuki NAMBA
1
,
Syun-ichi YAMASHITA
1
1長崎大学医学部原爆後障害医療研究施設分子医療部門分子診断分野
pp.1425-1432
発行日 1999年10月30日
Published Date 1999/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542904242
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はじめに
私たちの健康を脅かす環境因子は,主として2種題に大別できる.第1のグループは,ダイオキシン,アスベスト,鉛といった化学物質である.そして第2のグループは,身体に加えられるエネルギーによる害であり,それには,紫外線や放射線などが含まれる.
化学物質は,細胞に毒性に働いたり,内分泌攪乱物質のように受容体を介してホルモン様の作用を引き起こす.一方,エネルギーによるものは,熱エネルギーとして局所または全身に火傷を引き起こすごばかりでなく,直接遺伝子を障害し,局所フリーラジカル放出や遅延性の遺伝子不安定性を誘導することにより細胞死や癌化につながる(図1).
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