特集 臨床検査の新しい展開―環境保全への挑戦
Ⅱ.環境問題と疾病
9.環境と放射能
3)マーシャル諸島の放射能障害
中島 範昭
1
,
藤盛 啓成
1
,
高橋 達也
2
Noriaki NAKASHIMA
1
,
Keisei FUJIMORI
1
,
Tatsuya TAKAHASHI
2
1東北大学医学部第2外科
2長崎大学医学部衛生学
pp.1433-1438
発行日 1999年10月30日
Published Date 1999/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542904243
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はじめに
マーシャル諸島共和国は,太平洋南洋群島の東端,北緯4~14゜,東経160~173゜,約180km2に拡がって点在する,29の環礁と5つの島から成る人口約5万人の島国である(図1).戦前,日本の信託統治下にあったが,第二次世界大戦後アメリカ合衆国の信託統治領となった.合衆国は1946年から1958年にかけてBikini環礁とEn-ewetak環礁において,公式記録では66回の核実験を行った.なかでも,1954年3月1日に行われた水爆実験,CASTLE BRAVO testは歴史上最大規模であり,多量の放射性降下物("死の灰",fallout)はマーシャル諸島の島々を汚染し,住民に深刻な放射線被曝障害を与えた1).ここでは,既に報告されている被曝後地域住民に発生した被曝障害を総括するとともにわれわれが行った甲状腺検診(Nationwide Thyroid Study)についてその成果を報告する.
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