特集 これだけは知っておきたい診断のポイント
V.内分泌系
1.甲状腺疾患の診かた
甲状腺癌
降旗 力男
1
1信大第2外科
pp.1145-1148
発行日 1972年7月5日
Published Date 1972/7/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402204233
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
甲状腺癌は少なくない
甲状腺に発生する悪性腫瘍は,表1に示すようなものがあるが1),このなかで最も多いものは癌,とくに乳頭腺癌である.
甲状腺癌は一般に少ないものと考えられており,これは厚生省の統計による年間死亡数が300名余2)というほど少ない点からみても考えられやすいことである.しかし,甲状腺癌はそんなに少ないものではないということがわかった.筆者らは長野県下13地区において甲状腺腫の集団検診を行なったところ,甲状腺癌が1万人に対して13人の割合に発見された.とくに30歳以上の女性についてみると,1万人に対して31人の有病率となり,これは従来の概念をはるかに上回る高い率であることが判明した.この事実は年間死亡者数の少ない点と矛盾するようであるが,甲状腺癌の大部分を占める乳頭腺癌は発育がおそく,治療後の予後が良好であるので,患者数は多くとも死亡者数は少ないという結果になると考えられる.したがって,甲状腺癌は少ないという従来の概念は訂正されなければならない.換言すれば,甲状腺に腫瘤を認めたならば,つねに癌を念頭において診察する必要があろう.
Copyright © 1972, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.