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二次性白血病あるいは治療関連白血病は化学療法や放射線療法を受けた担癌患者に二次的に発生してくる白血病である.癌治療,特に化学療法と放射線療法の進歩が著しい分野で,長期生存者が増えてくるにしたがって多く認められるようになる.従来から二次性白血病は,化学療法ではアルキル化剤の使用例や放射線療法との併用例に高頻度に発現することが明らかにされてきた.このような二次性白血病では約半数に形態学的に3血球系に異形成を伴うなど,形態異常が強いことが特徴とされていた.しかし,トポイソメラーゼⅡ阻害剤であるエトポシドが導入されて以来,これを使用して発生してきた二次性白血病は約半年から5年という早期に発症し,染色体異常も治療反応性も形態学的にも初発白血病と変わりがないことが特徴とされている.次に最近経験した二次性白血病例を紹介する.
第1例目は成人T細胞白血病(adult T cell leu-kemia;ATL)と診断され,化学療法(CHOP療法)によって約8か月間寛解状態を維持していたが再発し,化学療法(エトポシドを含む)でコントロールされていた.しかし,約6か月後に白血球数41,900/μlを呈し,芽球と単球の増加を認めるようになった.骨髄像(図1)は,骨髄芽球と幼若顆粒球とやや未熟な単球を認め,急性骨髄単球性白血病(AML-M4)と思われた.myeloperox-idase (MPO)染色(図2)では,芽球の一部は陽性であり,原形質が広い単球あるいは前単球は弱陽性あるいは陰性であることがわかる.図3に示すようにesterase二重染色では単球(茶色)と穎粒球(青色)の混在が認められる.本例は染色体異常t (8;16)(p11;p13)を有していた. AML-M4は化学療法に反応して寛解状態に入ったが,原疾患であるATLが増悪して死亡した.次の症例は24歳時に子宮頸癌のために広汎子宮摘出術を受け,50Gyの放射線照射と5FUを1年半投与されている.29歳になり,AMLを発症した.骨髄(図4)は,原形質に乏しいが,一部に少数のアズール穎粒を有するやや小型の芽球が90%以上を占めており,MPO (図5)はほぼ100%陽性であったためAML-M1と診断した.免疫学的マーカーはCD13+/CD33+であり,染色体は正常核型であった.本例は,idarubidnとAra C併用によって完全寛解に導入された後,非血縁ドナーからの骨髄移植を行い,1年6か月寛解を維持している.最後の症例は,ATL発症後化学療法によって,約9年間寛解増悪を繰り返していたが,ここ2~3年はエトポシド少量を反復使用することによってATLは上手くコントロールされていた.しかし,ATLの増悪とともに図6に示すように骨髄に豊富なアズール穎粒を有する前骨髄球にアウエル小体を有する芽球とその右方に原形質に空胞を有し,核網は豊富だがやや繊細なATL細胞を認めた.ATLにAML-M 3を併発してきたと考えられ,RT-PCR法によってPML/RARαを認めたため診断確定した.オールトランスレチノイン酸(ATRA)投与を試みたが,ATLの病勢が強くなりATRAの効果判定はできないまま死亡した.
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