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急性リンパ性白血病(acute lymphoid leuke-mia;ALL)における増殖芽球,すなわちリンパ芽球はmyeloperoxidase(MPO)陰性である.しかし,ALLの確定診断のためには一部の骨髄性白血病もMPO陰性なので,免疫学的にリンパ性マーカーを確認する必要がある.
図1に示すように赤血球よりやや大きい10μm程度の小型芽球は形態学的にリンパ芽球と判定できる.核網は豊富で繊細さに欠け核小体に乏しく,原形質は非常に狭い.これが,いわゆる典型的"リンパ芽球"である.FAB分類ではこの小型リンパ芽球が主体の病型をALL-L1とし,小児に比較的多くみられる.ALL-L1芽球は,免疫学的にもリンパ系マーカーが陽性であることが多い.図2に間接蛍光抗体法によるCD 10陽性芽球を示す.一方,大型芽球が主体の場合はALL-L2に分類される(図3).このような大型芽球を形態学的にリンパ芽球と同定するのは,非常に難しい.免疫学的マーカー検索をしてMPO陰性芽球からなるAML-M0,-M5a,M7などと鑑別しなければならない.しかし,一部の症例では典型的小型リンパ芽球が少数ながら混じえている場合があり,ALL-L2を強く疑うことができる.一方,ALL-L1芽球が比較的多く,一部大型芽球が認められる場合にはL1とL2の鑑別が難しくなり,FAB分類ではスコアリングシステムによって機械的に分類することになっている.ALL-L3は,形態学的には図4に示すように特徴のある細胞で,診断に苦慮することは比較的少ないとされている.大型細胞で原形質は好塩基性が強く,最大の特徴である空胞が数多く認められる.免疫学的にも成熟B-細胞の形質である表面免疫グロブリン(SmIg)を有しており,唯一形態と免疫学的形質が一致する.しかし,図5に示すようにcommon ALLであるのに空胞を有しALL-L3様芽球の増殖を認め,ALL-L2とするには躊躇する.逆に図6に示すのはB-ALLであるにもかかわらず空胞が比較的少なく,先の図5症例との鑑別はほとんど不可能と思われる.またL1とL2との鑑別についても,両者には治療成績や免疫学的マーカーや染色体などの生物学的特徴に明らかな相違は認められていない.これらからもわかるように,ALLの病型分類は形態診断からなるFAB分類のみでは不十分であり,免疫学的分類が併記されているのが現状である.
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