- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
白血病の診断時に脾腫ということで,カラ・アザールが鑑別診断として成書には取り上げられている.わが国ではカラ・アザールを鑑別する必要があるのだろうか.カラ・アザールの診断は簡単にできるのか.診断にはどのような検査がされるのであろうか.どのようなことに留意しておく必要があるのか.カラ・アザールの診断の難しかった症例からカラ・アザールをみてみよう.
カラ・アザールはわが国では第二次大戦のころに300例ほどみられたが,最近では輸入感染症として注目を浴びる本当にまれにみられる寄生虫疾患である.以前,全身倦怠感と発熱を主訴とし,診断の難しかったカラ・アザールの30歳の女性患者を経験した1~3.カラ・アザールの鑑別診断では渡航歴が重要であり,彼女にはアメリカとインドへの滞在歴があった.しかし,カラ・アザールの診断は容易ではなかった.はじめにアメリカで,彼女は発熱ということで感染症も疑われ,HIV,EBV,CMV,HAV,HBV,HCV,トキソプラズマ,サルモネラ,ライム,Q熱,マラリア,ブルセラ,プロテウス,コクシエラ,ツラレミア,真菌などの検査をしたが,確定診断を得られなかった.次に骨髄生検,肝生検でhistiocytesの浸潤をみるが,悪性細胞は認められなかった.これらの検査をするが確定診断ができず,脾腫が認められ,同時に汎血球減少が出現したので脾腫摘出手術を受け,確定診断のつかないままステロイドホルモンの投与により,症状が落ち着き帰国した.そして精査のため入院となった.再度,骨髄穿刺されたが,悪性リンパ腫の確定診断が得られなかった.やはり,感染症が疑われ抗菌療法をされた.また,ステロイドホルモンの減量をしたところ,弛張熱をみるに至った(図1).腹部CTにより肝臓の著明な腫大を認めた(図2).そこで,また骨髄生検を行ったところマクロファージにLeushmania donovaniのアマスチゴートを認めた(図3).確認の意味で骨髄および血液を培養したところ,Leushmaniadonovaniのプロマスチゴートを認め(図4),カラ・アザールと確定診断された.
Copyright © 1998, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.