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特集 十二指腸・小腸疾患アトラス
Ⅱ.炎症性疾患
感染症:寄生虫,原虫性
ランブル鞭毛虫症(ジアルジア症)
Giardiasis
金城 徹
1
,
瑞慶山 隆太
1
,
大平 哲也
1
Tetsu Kinjo
1
,
Ryuta Zukeyama
1
,
Tetsuya Ohira
1
1琉球大学病院光学医療診療部
キーワード:
ランブル鞭毛虫症
,
ジアルジア症
,
原虫
Keyword:
ランブル鞭毛虫症
,
ジアルジア症
,
原虫
pp.580-581
発行日 2024年4月25日
Published Date 2024/4/25
DOI https://doi.org/10.24479/endo.0000001370
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疾患の概要
ジアルジア症は腸管寄生原虫であるランブル鞭毛虫(Giardia lamblia,別名G. intestinalis,G. duodenalis)がヒトの十二指腸,空腸上部,時に胆囊や胆管などの粘膜上に寄生することで消化器症状をきたす寄生虫疾患である1)。本症は感染症法の五類全数把握届出疾患に指定されており,診断後1週間以内に最寄りの保健所への届け出が義務付けられている。G. lambriaはA~Hの8つの遺伝子があり,ヒトに感染するのはAとBのみであるが,これらはペットや野生動物にも感染する人獣共通感染症の可能性を有している2)。G. lambriaは2分裂により増殖する栄養型と,外部環境に耐性をもつ感染性囊子の形態をとり,糞便中に排出された囊子の経口摂取により感染するため,感染経路としては汚染された食品媒介感染(氷,野菜など)や水系感染(水道水,河川水,湖水など),糞口感染(性行為,老人施設など)が報告されている。栄養型は涙滴状で4対8本の鞭毛を有する。感染者の多くは無症候性囊子排出者となるが,旅行者下痢症などで囊子摂取後に発症する場合の潜伏期間は1~3週間で,おもに下痢(時に吸収障害による脂肪性下痢),腹痛,鼓腸,おくび(げっぷ),放屁(強い硫化水素臭),悪心・嘔吐が多く,発熱や血便をきたすことは少ない。時に胆管や膵管へ侵入し,胆管炎・胆囊炎,膵炎の報告がある。下痢症状は通常1~2週間で自然治癒するが,一部は慢性感染となり腸管上皮微絨毛の平坦化,吸収不良による脂肪便,乳糖不耐症,体重減少などの原因となる3)。
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