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1.抗体による診断
本法は次に述べるPCR法による診断と並んでいまだにその診断的価値は失われていない.特にPCR陰性例または陰性化した脳炎後期には不可避である.抗体の測定法には中和(NT),補体結合(CF),蛍光(FA),EIAの各方法がある.これらの測定法のいずれでもよいが,脳内ウイルス増殖と固体の免疫反応の程度の推測が困難なため,感度,特異性ともに優れた測定法が推奨される.現時点では1測定法で両者を満足させる方法はないので,筆者は高感度のEIA法と特異性に優れたNT法の並検を愛用している.この際,髄液中にも意義不明の抗体が検出されることが多々あるので1),経過中少なくとも2点測定し各点における抗体価の有意な変動の有無を捉える.
NT法による測定では髄液中で検出されない場合があるので補体添加によって高感度化した補体要求性中和抗体(complement requiring neutralizing anti-body;CRN)2,3)を用いるとよい.さらに,得られた変動力価が,サンプリングエラーなど,測定技法上のミスでないことを確認するため後に改めて凍結保管サンプルについて同一条件下,同時測定による再検が必要となる場合がある・当然のことながらIgM抗体の測定も必須である.図1に臨床経過と血清および髄液中のIgG抗体価の推移を模式的に表した.抗体の上昇が破線で示すごとく脳炎進行停止(ウイルスの消失)後もプラトー型に長期にわたり検出される例と実線で示すごとく下降する例とがあることに留意する必要がある.例えば,脳炎初期(急性,亜急性期)に抗体測定を逸したり医療機関受診の遅滞などで起こりうるb-d間のごとく変動が認められないときは本法による診断が困難となる.このような場合は捕捉(capture) EIA法4,5),CRN, CRN/NT比3)を試みるとよい.
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