シリーズ最新医学講座―遺伝子診断 Application編
発作性夜間血色素尿症
西村 純一
1
,
弘田 稔幸
2,3
,
木谷 照夫
4
Junichi NISHIMURA
1
,
Toshiyuki HIROTA
2,3
,
Teruo KITANI
4
1大阪大学微生物病研究所免疫不全
2大阪大学微生物病研究会
3大阪大学医学部血液・腫瘍内科
4大阪市立堺病院
キーワード:
発作性夜間血色尿症
,
PIG-A
,
GPI-アンカー型蛋白
Keyword:
発作性夜間血色尿症
,
PIG-A
,
GPI-アンカー型蛋白
pp.1062-1067
発行日 1997年9月15日
Published Date 1997/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542903426
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はじめに
発作性夜間血色素尿症(paroxysmal nocturnalhemoglobinuria;PNH)は,血色素尿を主徴とする血管内溶血性貧血であるが,その病因に関する分子レベルでの成績は,1983年にdecayaccelerating factor(DAF)★がPNH患者の異常赤血球において欠損しているという報告が最初である.その後,補体活性化の後期段階を制御しているCD59★もPNH赤血球で欠損していることが判明し,PNHは補体活性化制御蛋白の欠損病として把握された.さらに同じころ,PNH患者の異常赤血球はこれらの蛋白のみならず,ほかにも欠失した蛋白があることが判明した.これらの欠損蛋白は,すべてglycosylphosphatidylinositol(GPI)と言われる糖脂質を利用し,細胞膜にアンカーするGPIアンカー型蛋白(GPI-AP)と呼ばれるものであった.
PNHは後天性の疾患でこの異常は血液細胞でのみ検出されるので,造血幹細胞に体細胞突然変異が生じたクローナルな疾患と理解された.また,PNH細胞ではすべてのGPI-APが欠損しており,個々の蛋白の構造遺伝子は正常なので,PNHの病因はGPIアンカー合成にかかわる遺伝子の変異であろうと考えられた.この合成系には少なくとも10段階のステップがあり,細胞融合による相補性の実験から8種類の異なる変異細胞株が知られていた.
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