図解 病態のしくみ—遺伝子・サイトカインからみた血液疾患・12
発作性夜間血色素尿症
岡本 真一郎
1
1慶應義塾大学医学部内科
pp.2663-2666
発行日 1994年12月10日
Published Date 1994/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402903440
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発作性夜間血色素尿症の病態
発作性夜間血色素尿症(paroxysmal nocturnal hemoglobinuria:PNH)は,夜間睡眠時の血管内溶血により,早朝尿が暗赤色のヘモグロビン尿を呈する特異な後天性疾患である.PNHで認められる溶血は,赤血球膜の補体感受性が異常に亢進しているために起こると理解されている.本疾患の診断に用いられてきたHam試験,Sugar water試験などは,in vitroで血液中の補体を酸あるいは糖によって活性化させ補体感受性赤血球の存在を確認する検査である.夜間尿の血色素色調が濃くなりやすいのも,夜間のわずかな血清酸性化に伴う補体活性化により溶血が盛んになるためと考えられている.PNHに認められる補体感受性亢進の原因となる膜異常は,赤血球系にとどまらず骨髄系細胞・リンパ球にも及んでいる.つまり,PNHは一つの多能性造血幹細胞に起こった後天的異常による疾患と理解することができる.
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