シリーズ最新医学講座―遺伝子診断 Technology編
染色体の電子顕微鏡観察法―走査電顕法
飯野 晃啓
1
,
稲賀 すみれ
1
Akihiro IINO
1
,
Sumire INAGA
1
1鳥取大学医学部解剖学
キーワード:
染色体
,
DNA二重らせん
,
走査型電子顕微鏡
Keyword:
染色体
,
DNA二重らせん
,
走査型電子顕微鏡
pp.1055-1061
発行日 1997年9月15日
Published Date 1997/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542903425
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走査電顕(SEM)法
走査電顕(走査型電子顕微鏡scanning electron micro-scope;SEM)による染色体観察の試みは,スライドグラスに広げた光顕用標本をそのまま観察することから始まった1,2).一般にSEMで観察される像は焦点深度が深く立体的であるが,スライドグラス上に広げた染色体は,空気乾燥の際にかかる表面張力のために押しつぶされて本来の立体構造が損なわれてしまう.また,染色体の周囲に細胞質や細胞膜が残っていることもしばしばであり,本来の微細構造が十分に把握できないという難点があった.そこでSEM観察のための染色体試料作製技術が次々に開発された.それには,光顕標本の直接観察法のほか,透過電顕(透過型電子顕微鏡transmission electron microscope;TEM)法にも用いられた染色体単離法や界面展開法のSEMへの応用3,4),細胞を割って染色体を剖出する凍結割断法5),染色体以外の細胞成分を溶解除去する酢酸加熱法6,7),光顕用標本に導電染色★を繰り返し施すオスミウム・チオカルボヒドラジド法8)などがある.さらに最近では,クロマチンの最小単位であるヌクレオソームやDNAをSEMで観察するために微小遠沈法9,10)が改良して用いられている11).
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