今月の表紙 表在性真菌症の臨床検査シリーズ
まれな表在性または深在性皮膚真菌症の臨床検査・1
黒癬
山口 英世
1
,
内田 勝久
1
1帝京大学医真菌研究センター
pp.1106-1107
発行日 1996年10月15日
Published Date 1996/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542903034
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黒癬(tinea nigra)は,主として年少者の手掌に発症し,自覚症状がないことに加えて境界明瞭で非隆起性の褐色ないし黒色の不規則な形の色素斑をつくることを特徴とする表在性真菌症である(図1).もともと熱帯,亜熱帯地域にみられる疾患として知られ,特に中南米からの報告例が多い.一方,わが国には黒癬はないといわれてきたが,1983年に沖縄で第1例が見つかつた.それ以来沖縄をはじめ九州や四国の南部からも報告例が相次ぎ,近年さらに発生地域が拡大して関東(東京,神奈川)でも症例がみられるようになった.今後は全国的に患者が発生するものと予想されるが,前号まで述べてきた主な表在性皮膚真菌症に比べれば,まれな疾患であることには変わりない.
黒癬の原因菌は黒色真菌に属する一菌種であるが,その分類学的位置についてはなお議論が残されている.現在,Cladosporium werneckii, Exo-phiala werneckii, Phaeoannellomyces werne-ckii,またはHoztaea werneckiiの菌名が統一されないまま使用されているが,わが国では西村・宮治(1984年)によって命名されたH.werneckiiが一般的である.
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