特集 免疫組織・細胞化学検査
基礎と技術
9.特殊技術・応用
1) in situ hybridization
小路 武彦
1
,
中根 一穂
1
Takehiko KOJI
1
,
Kazuo NAKANE
1
1長崎大学医学部解剖学第3講座
pp.65-69
発行日 1995年10月30日
Published Date 1995/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542902670
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
機能状態の異なる多様な細胞から成る組織切片において,細胞個々のレベルで特定の蛋白質発現を把握することは,各細胞の生理状態を理解するにとどまらず,組織全体の構造的あるいは機能的バランスを理解するうえで必須と考えられる.ここで免疫組織化学が威力を発揮するわけであるが,ホルモンやサイトカインなどの分泌される蛋白質の場合,存在が必ずしもその細胞での合成を意味しないことが判明している.また,最近では最終生産物の蛋白質については詳細不明にもかかわらず遺伝子の塩基配列については明らかにされる例が頻発している.このような先端的分野においては,遺伝子発現状態の組織細胞レベルでの検索方法としてin situ hybridization (ISH)の利用が不可欠である.
一方,免疫組織化学の技術的な問題点として,仮にシグナルが陰性であった場合,抗原性が用いられた条件下で本当に保存されていたのか? あるいは反応性は維持されていたのか? という疑問が付きまとう.ISHの標的が核酸という一定の化学物質であるのに対し,免疫組織化学では抗原物質は化学的に多様で固定液などの影響も一様ではないからである.事実ステロイドホルモン受容体1,2,3)に見られるように,最近のマイクロウエーブやオートクレープによる抗原性の賦活化により,以前は陰性と思われていたものが,実は陽性であったと判明した例も相次いでいる.
Copyright © 1995, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.