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in situ hybridization(ISH)がGallとPardueおよびJohnらによって発明され,世に紹介されたのは1969年であり,すでに30年も経過している.しかし,医学,生物学の各領域でISHが地についた,価値のある応用が頻繁に行われるようになったのは,ここ10年間ぐらいのものである.この主な理由として,分子生物学,遺伝子工学の目覚ましい発展からばくだいな数種類のcDNAや,anti-sense RNAが合成プローブを含めて容易に入手できるようになったことが挙げられる.この間,ISHの応用を含めた技術解説に関する単行本,雑誌における特集号の発刊は枚挙にいとまがない.本誌だけでも,関連論文が十数編に及んでいる.
こうしたISHも単純にもてはやされてばかりいたわけではなく,①かなり多くの場合,検索しようとする遺伝子が微量で,現行のISHの技法では検出感度が十分でないことが指摘されてきている.ことに日常の病理検査(組織診,細胞診)では,時間的なこと,場所的な問題から非放射性プローブの使用が条件つけられる場合が多く,非放射性プローブ法の感度の低いことが問題視されてきていた.また②ISHの重要な効能の1つである染色体上での特定の遺伝子の局在観察や,微小染色体の構造解析などについては高分解能を持った観察法が要求されている(FISH法).さらに③癌や発生異常疾患において,未知の遺伝子を含め染色体上での遺伝子の異常な増幅や欠失を検出するというぜいたくな要求も増してきている.これらの問題点の解決を目標に,最近新しい技術の開発,改良とそれらの応用に関する報告が盛んになされてきている.ISHの臨床検査への応用という立場から,これらの新しい知見(例えば"in situ PCR","FISH法の改良"さらに"comparative genomic hybridization;CGH"など)を交えて,もう一度ISHを見直す特集を組むことは意義のあることであると思う.
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