特集 免疫組織・細胞化学検査
基礎と技術
7.抗原性の賦活法
1)酵素処理
小林 晏
1
Yasushi KOBAYASHI
1
1大阪厚生年金病院病理科
pp.47-49
発行日 1995年10月30日
Published Date 1995/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542902664
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ホルマリン固定,パラフィン包埋切片を用いて免疫組織化学的染色を行う場合,トリプシン,ペプシン,プロテアーゼ(プロナーゼ)などの蛋白分解酵素による前処理を行うことによって,組織切片中の抗原性が賦活化される.この抗原性の消失はホルムアルデヒド固定液により抗原性が遮蔽されるからである.その理由の第1は遊離アミノ基の消失に基づく抗原決定基そのものの変性による非可逆的なものであるが,第2の理由として,抗原決定基を含む蛋白分子内の架橋ないし周囲のほかの蛋白分子との間の架橋に基づく立体障害による可逆的な場合が挙げられる.後者の場合は,架橋によって形成される立体障害のため抗体分子が抗原決定基と反応しえなくなるのである.この立体障害を取り除く目的のため蛋白分解酵素処理が行われるのである1,2).従来から通常よく用いられたのはトリプシンであるが,最近では,ペプシンやプロテアーゼ(プロナーゼ)を用いることが多い3).未処理のホルマリン固定,パラフィン包埋切片ではほとんど反応性を欠く場合に,蛋白分解酵素処理を施行することにより,初めて再現性のある安定した染色結果が得られ,十分に目的とする抗原の同定と局在性を観察できるようになる3).さらに多くの場合,本処理により背景の染色性を低下させる効果がある4).しかしながらアルコール,ブアン,アセトン固定パラフィン包埋切片や凍結切片では蛋白分解酵素処理は全く無効であり,行う意味がないと言える1,2).
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