技術講座 病理
検体の処理法・9—組織化学(2)酵素
鈴木 裕
1
1慶大病理学教室
pp.68-69
発行日 1974年12月1日
Published Date 1974/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543200659
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酵素類は生きている分子と呼ばれているように生体の代謝過程の遂行上主役ともいうべき物質で,現在のところ生化学的に千数百種にものぼる酵素が分離,同定されている.このうち,酵素の分解あるいは合成作用によって自然のまたは人工的な基質から生成された化合物を組織化学的方法によって捕捉し,酵素の局在を酵素活性として顕微鏡下で検出が可能となっている酵素は百数十種くらいである.一方,酵素はタンパク質を主成分とする高分子化合物であるので抗原性を有し,免疫学的方法によってその局在性を知ることができる.現在この方面は螢光抗体法,さらに近年その電子顕微鏡レベルへの応用という点ですぐれた特徴を持っている酵素抗体法が広く行われるようになってきた.この免疫学的方法は抗原となる酵素に対する抗体が作れればよいのであるから,この方法ですべての酵素の局在は少なくとも原理的には検出可能であるが,一定量以上の酵素の精製や抗原としての酵素を抗原抗体反応を行うまで組織内に保存する方法(組織の固定,切片作製の期間中)が酵素によって種々難があり,一律に行える方法ではないが,これからますます発展する方法と思われる.ここでは従来の方法について述べることとする.
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