特集 免疫組織・細胞化学検査
基礎と技術
4.検体の採取と保存
石田 剛
1
Tsuyoshi ISHIDA
1
1東京大学医学部病理学教室
pp.21-23
発行日 1995年10月30日
Published Date 1995/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542902652
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
免疫組織化学は抗原抗体反応を利用した組織化学的手技で,細胞あるいは組織内の特定の物質(すなわち抗原)をその物質に対する特異的な抗体を用いて検出するものである.免疫組織化学的方法により細胞あるいは組織内の多くの物質を組織切片上で直接証明できるようになった.免疫組織化学的染色を成功させる基本的条件として,抗体側では特異性が高くかつ活性が高い抗体が得られることであり,抗原側では細胞組織中の抗原物質を抗原性を失うことなく適切に不動化,固着化することである.前者に関しては,抗体の特性に多少の違いはあるものの,現在の市販の抗体を使うかぎり一般にはそれほど大きな問題にはならないと考えられる.後者の過程では固定操作が最も大切であるが,これは次項で詳述される.しかし,いくら適切な固定がなされても,病変部から検体が採取されていなければ,いくら免疫染色をしても全く意味がないことは明らかである.検体の採取にあたり基本的に大切なことは,病変の肉眼像の精確な読みと疾患(病変や組織像ではなく)の性質の十分な理解である.これにより不必要かつむだな検体採取を防ぐことができ,また,後の検索に支障をきたすような新鮮材料の割入れや検体採取を防ぐことができる.ここでは固定とならび免疫組織化学的検査の染色以前の重要なステップである検体の採取とその保存法について,若干の注意点を含め簡単に解説する.
Copyright © 1995, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.