特集 ホルモンと生理活性物質
総論
1.ホルモンの生理学
本間 研一
1
Ken-ichi HONMA
1
1北海道大学医学部第1生理学講座
pp.12-19
発行日 1994年10月30日
Published Date 1994/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542902163
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
ホルモンと内分泌系
ホルモンが発見されたのは今世紀初頭(1902年)のことである.イギリスの生理学者Bayliss WMとStarling EHは,小腸粘膜で産生され,血流によって膵臓に運ばれて膵液分泌を促す物質を発見し,セクレチンと名づけた.これと前後して,同じイギリスの生理学者Edkins JSは胃粘膜に胃酸分泌を刺激する物質,ガストリンを見つけた.セクレチン,ガストリンの発見により,それまで支配的であった"生体機能はすべて神経により調節されている"という考え方は大きく変更され,ホルモンという新しい概念が提唱されたのである.ホルモンとは"刺激する"という意味のギリシャ語に由来する言葉で,後年,特定の臓器(内分泌腺)で作られる化学物質で,血流で離れた場所に運ばれ,少量で特異的な作用を発揮するもの,と定義された.
このような性質を持つホルモンは副腎,膵臓,甲状腺,脳下垂体,性腺などから多数見つかり,神経系と並ぶ生体機能調節機構としての内分泌系が確立された.内分泌とは,言うまでもなく,体外に通じた管腔に分泌される胃液や膵液などの外分泌に対し,体内(血中)に分泌されることである.
Copyright © 1994, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.