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現生人類ミトコンドリアDNAの共通祖先
長谷川 政美
1
1統計数理研究所
キーワード:
ミトコンドリアのイヴ
,
人類進化
,
DNA
Keyword:
ミトコンドリアのイヴ
,
人類進化
,
DNA
pp.708-709
発行日 1994年6月15日
Published Date 1994/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542902011
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ミトコンドリアDNAは,通常には母親からしか遺伝しないので,これを用いてわれわれの女系の祖先をたどることができる.地球上には,現在55億人を超える人々が生きているが,これらの人々のミトコンドリアDNAの祖先をたどっていくと1人の女性にたどりつく.この女性のことを,"ミトコンドリアのイヴ"と呼ぶこともある.アメリカ・カリフォルニア大学の故AC Wilson らのグループ1,2)は,このイヴが,およそ20万年前のアフリカにいたという説を唱え,大きな論争を巻き起こした.
彼らによれば,さまざまな人種からサンプルしたミトコンドリアDNAの系統樹をつくると図1のようになる.系統樹の根元,つまリイヴから,まず2つの系統が分かれ,一方の系統にはアフリカ人しか含まれないのに対して,もう一方は,アフリカ人をはじめあらゆる人種を含んでいる.このことは,現生人類の祖先がアフリカで進化したあと(つまりイヴはアフリカにいた),一部の集団が世界各地に進出していったことを示唆する.また,ヒトと類人猿の分岐に関する研究から割り出されたミトコンドリアDNAの塩基置換速度を用いると,イヴが生きていたのは,およそ20万年前であったという.
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