COFFEE BREAK
うどん考
屋形 稔
1
1東新潟病院
pp.609
発行日 1993年6月15日
Published Date 1993/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542901557
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戦前に馬市で全国的に有名だったのは岩手の盛岡と福島の白河であった.馬市には名馬,凡馬が無数に集まり時ならぬ殷賑を極めたものであった.白河から数里離れた私の田舎町も4月になると10日くらいオセリと称する小さい馬の競り市が開かれ,小学校から帰って香具師の店を見物に出かけるのが楽しみな年間の重要イベントであった.ザラ紙の立川文庫が露店に並んだり,バナナや瀬戸物の叩き売りが面白かったが,臨時に店を出すうどん屋の一杯5銭玉のうどんを食べるのが堪らなく楽しみで,あの味は半世紀以上たった今でも舌に残っているのである.
その後,全国に旅して土地柄のうどんやそばの味を楽しみ求めているが,うどんは西高東低で関西のほうが讃岐うどんをはじめ大阪のケツネうどん,名古屋のきしめんなど総じていい味である.しかし美味求真というが,真に近いのが幼年時の祭りのうどんというのはどういうわけであろうか.ものではなく思い出の名残りが加味されるのであろうか.
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