コーヒーブレイク
里山考
屋形 稔
1
1新潟大学
pp.416
発行日 2006年4月15日
Published Date 2006/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542100080
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日本海という海原,信濃川という大河に囲まれた新潟の風景はそれなりに悪くない.しかし60年以上前に里山ばかりの福島の片田舎から進学のため移り住んだ新潟では,緑の少ない異和感と寂しさに暫くの間悩まされたものである.
わが故郷はいま思うと最も日本らしい懐かしい風景というべきであろう.あの“兎追いしかの山 小鮒釣りしかの川”という絶唱にぴったりであった.一見変哲もない小山や小川,かぶと虫の沢山とれる松林を無心にかけ廻った日々は常に胸中に在り,長じて益々強く何者にも代え難いものとして棲みつくようになった.
同じような風景は6里程離れた母の実家のあった山村まで続いており,徒歩や自転車で度々往復した.そこには徳川時代から連綿と続いた漢方医の先祖の墓が並んでいた.その里で数百年生計を営んでいたと思うと,一木一草,田んぼのあぜ道にも親近感があった.
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