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1991年10月9~11日の3日間,秋晴れの北海道旭川市において,第38回日本臨床病理学会総会が旭川医科大学臨床検査医学教授,牧野幹夫総会長の下で開催された.本会は臨床病理学,臨床検査医学に従事する医師,検査技師の学術活動の核となる学会で,特に来年1月1日からの新会則のスタートと新役員の決定ということでエポックメーキングの学会となった.今年も講演が計5題,シンポジウムなどが計4題,一般演題が口演,示説併せて676題といつもながら盛りだくさんで,このほかにも学術展示,夜には,メーカー後援の技術セミナー,学会の各専門部会活動としての講演会などがあり,意欲旺盛の会員諸氏は,秋の北海道の自然と味覚を満喫する暇がなかったようである.
本総会は第38回であるが,前身の懇談会時代から数えると40周年にあたり,記念に川崎医科大学名誉教授,柴田進氏が「この頃心にかかること」と題して講演された.お話は記念講演にふさわしく40年前の夢を語り21世紀への展望を試みられた.その夢の後での斯学のたどった迫害,圧迫の歴史と先人の苦労は若い方々の想像を絶するもので鬼気迫るものがあった.幸い草の根のごとき援助と技術進歩に伴い今や検査結果なしで診療はできなくなっている.今後は検査は病人のためというポリシーに従って生のままでない意味づけが求められる.招待講演としてJ Clin PatholのEditorであるDr. Lilleymanが「ヨーロッパにおける臨床病理学(臨床検査)の変わりつつある展望」を,経済的な視点もからめて述べられた.牧野総会長講演では,「臨床検査とエキスパート・システムへの期待」と題して,臨床検査は分析だけでなく,結果の意味づけを重視する必要があると,柴田氏と同じような論点で講演された.シンポジウム2の「白血球研究の最近の進歩」は,これまでIL-1で説明されてきたことが実はIL-8という新しく同定されたサイトカインのしわざであったことなど,もっともup to dateの内容で,基礎知識として持っていなければと思った.
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