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血小板抗体は,自己血小板抗体と同種血小板抗体の2つに大別されるが,特発性血小板減少性紫斑病(ITP)における血小板減少の主要な原因は,自己血小板抗体と考えられている1).Dixonら2)の報告以来,ITPにおいて血小板表面IgG (PAIgG)を測定することは,重要な診断的意義をもつと理解されてきた.というのも,PAIgGは,血小板数の減少が著しいITP例では陽性率が高く,しかも血小板数が上昇すると,逆にPAIgGが減少する場合が多いからである.しかし最近,ITP以外の症例においてもこのPAIgGの上昇がみられる場合があり,その診断的意義については,多少の異論も唱えられている.一方,血小板結合性IgG (PBIgG)は,血小板数との問に有意な相関はみられず,その意義は不明であるものの,その原因の1つとしてHLA抗原の存在が考えられ,クロロキン処理3)や酸処理4)によるHLAクラスI抗原の除去も試みられている.
Georgeら5,6)は,健常血小板では血小板1個あたり約2万のIgG分子が存在し,そのほとんどは血小板内部,特にα顆粒に存在し,血小板刺激に伴って放出され,血小板表面にはごくわずかなIgGしか存在しないと報告している.最近,フィブリノゲンなどの血中粘着蛋白は,血小板や巨核球の内部に取り込まれ,α顆粒に貯蔵されるというメカニズムが報告されているが7),Georgeらは,IgG,IgA,IgMおよびアルブミンなども巨核球の内部に取り込まれ,そこから産生されたばかりの幼若な血小板ほど,多量の内因性IgGをもっているとしている.血小板破壊が充進した状態では,幼若血小板の動員が増加していると考えられ,これら内因性の血小板IgGは,増加の傾向にあると考えられる.
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