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合成,代謝,生体内分布
プロスタグランジン(PG)を代表とするエイコサノイドは,脂肪酸であるアラキドン酸(AA)の酸素添加酵素による代謝物の総称である.これらは細胞の静止状態では存在せず,さまざまな刺激で細胞内のカルシウムイオン(Ca2+)濃度が上昇すると,ホスホリパーゼA2による膜のリン脂質からのAAの遊離が引き金となって合成される.その産生刺激には,ペプチドホルモン(アンジオテンシンⅡ,ブラジキニンなど),神経刺激,炎症,阻血,機械的・物理的細胞障害などが含まれる.
遊離したAAは,おのおのの細胞に存在する酵素によって,AAカスケードと呼ばれる生合成系で速やかに代謝されるか,再びリン脂質ヘエステル結合するかする(図1).AAはリポキシゲナーゼによりロイコトリエン(LT)などPG以外の種々の物質に変換されうるが,シクロオキシゲナーゼの存在する細胞でAAはPGH2という共通の前駆体となり,さらに存在する酵素の種類によりトロンボキサン(TX)A2,PGI2,PGE2,PGF2α,PGD2などに変換され,細胞外に放出される.これらは局所で産生細胞自身か周辺の細胞に作用し,機能調節を行った後,特異的な脱水素酵素により,局所で,または血液循環中に肺で速やかに不活性化され,次いでさまざまな臓器で代謝を受ける.またTXA2やPGI2は化学的に不安定で,非酵素的にTXB2や6-keto-PGF1αに分解され(生理的条件での半減期はおのおの30秒と2分),さらに肝,肺,腎,胃などで代謝される(図2).この性質は,産生臓器と標的臓器が区別され,血中を安定形態で輸送されるホルモンと異なるのでオータコイドと呼ばれる.一方,PGはおのおの類似した構造を持ちながら,諸臓器で異なった多彩な作用を示す(表1).各PG作用は,細胞内への情報伝達の媒介をする特異的な細胞表面受容体の存在で決まる.
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