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経皮的冠動脈形成術(percutaneous trans―luminal coronary angioplasty:PTCA)は虚血性心疾患の治療に欠くべからざる手段として近年急速に普及し,冠動脈内の狭窄部を拡張させるバルーンも種々のものが開発され進歩を遂げていることはいうまでもない1).しかしながら急性期合併症や慢性期の問題が現在なお残されている.急性期合併症の中でも急性冠閉塞はことに重篤で,緊急バイパス手術までの時間に冠血流を維持し心筋を保護する手段が必要となる.また,当初慢性期再狭窄予防の対策として従来までの30~60秒の拡張より長い長時間拡張が有用である可能性が示唆されこれらの観点からバルーン拡張も生理的冠血流量に近い末梢冠血流量を維持しうるper―fusionカテーテルの開発が望まれていた.ここに紹介するSTACK perfusionカテーテル(ACS社)はバルーンの前後のシャフトに内腔と交通した側孔をもち,バルーン拡張中でも血液が冠動脈の末梢に灌流する新しいカテーテルである(図1).このカテーテルはDuke大学のRichard S. Stackらによって開発され,灌流圧80mmHgにて冠血流量約60ml/分以上を維持しうるシステムである.Stackらは実験的にperfusionバルーンカテーテルによる30分間の拡張中も心電図に有意のST変化はきたさなかったと報告した2).その後,長時間拡張は再狭窄予防効果をもたらさなかったとの報告が相次ぎ3),本カテーテルの適応は急性冠閉塞(abrupt reclosure)などの重大合併症発生時の使用に変化してきた.急性冠閉塞発生から緊急バイパス手術までの心筋保護に有用であり,これが本カテーテルが"bailout"(パラシュートによる脱出を意味する)カテーテルと呼ばれるゆえんである.さらに,その後症例の増加に伴いその適応も拡大しており,それらをまとめると表1のようになる.バルーンカテーテルの使用法は従来のバルーンのそれと大きな違いはないが灌流する血流量をなるべく多くするためバルーン拡張中はガイドワイヤーを側孔の手前まで引き抜きさらに可能であればガイドカテーテルも冠動脈入口部より外すという点が特徴点である.また拡張圧を6気圧以上にすると灌流用のルーメンがつぶれてしまい十分な灌流量が得られないため拡張圧は6気圧以下にするように指示されている.症例を呈示する.
症例は68歳男性,下壁の心筋梗塞にて某病院に入院.慢性期冠動脈造影のため当科へ転院した.冠動脈造影にて右冠動脈の2番に90%のeccen-tric stenosisを認めたため同部に対してPTCAを施行した.ところがPTCA終了30分後に患者が胸痛を訴えたため再び冠動脈造影を行ったところ,PTCA施行部は99%の再狭窄をきたしていた.そこでSTACK perfusionカテーテルを用い同部に対して5分と8分の拡張を施行し再び拡張に成功した(図2).
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