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実験的に感染の成立した非A非B型肝炎感染チンパンジーの血漿から抽出されたRNAのcDNAライブラリーから,回復期の患者血清を用いてimmunoscreeningされて得たcDNAクローンが,非A非B型肝炎の原因としてのC型肝炎ウイルス(hepatitis C virus:HCV)由来であろうとする根拠は2つある.1つは,その遺伝子がまったくヒトやチンパンジーの細胞DNAとハイブリダイズせず,gene walkingの結果,全長約10kbのプラス鎖のRNAであったことである1).この塩基配列は,一部のフラビウイルスと相同性があり,クローニングの出発材料であるチンパンジーの血漿の感染実験を長年にわたって地道にやっていたCDCのBradleyらが1982年当時から想定していた感染性因子の諸性状と矛盾しない2).
もうひとつの根拠は,はじめに得られたcDNA断片の近傍のcDNA (非構造蛋白をコードする領域の一部)を組換え酵母の中で発現させ,得られたポリペプチドを用いた抗体のアッセイの結果である3).すなわち,①この抗体が輸血後非A非B型肝炎の大半や散発性の非A非B型肝炎の半数以上に検出されること,②A型やB型肝炎患者にこの抗体は検出されない.これらの結果は,このアッセイ系の抗原が非A非B型肝炎の原因となる感染性因子に由来することを示すと同時に,さらにこのアッセイ系が感染性のウイルスの存在を示唆することがわかり,ウイルスキャリアの検出や,ウイルスの感染経路などについて調べるHCVの血清疫学に強力な武器となりうることがわかった4).日本での献血人口の約1%前後がウイルスキャリアであろうことから,輸血用の供血者のスクリーニングにも有用であることが示された5).また,このアッセイを利用して,肝硬変や肝癌患者(非B型)にも高率に抗HCV抗体が検出されること6)や,母児感染や夫婦間の感染を示唆するような症例も見いだされた7).
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