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カリウムイオン(K)の体内分布(図11))
体液は,水とそれに溶解している電解質やタンパク質などで構成され,細胞内液(intracellular fluid:ICF)として細胞内に,細胞外液(extracellular fluid:ECF)として細胞を取り囲んでいる.ECFはさらに,細胞と直接接している間質液(組織間液)と血管内を循環している血漿に細分される.ECFの血漿と間質液のイオン組成は極めて類似しているのに対し,ICFのイオン組成は全く異なっており,この違いが細胞の機能を維持するのに重要である.特記すべきは,ICFにカリウムイオン(potassium ion:K)が非常に多くナトリウムイオン(sodium ion:Na)が非常に少ないのに対し,ECFではその割合が全く逆になっていることである.これは,細胞膜に存在するNa-Kポンプ〔Na/K-ATPase(adenosine triphosphatase)〕が,アデノシン5′-三リン酸(adenosine 5′-triphosphate:ATP)の加水分解によって作られたエネルギーを利用して,細胞内からのNaのくみ出しと,細胞外からのKのくみ入れを行っているからである.こうした濃度勾配に逆らった上り坂輸送を能動輸送という.Na,K-ATPaseの細胞内基質はNa,細胞外基質はKのため,ICFのNa濃度やECFのK濃度が上昇すると,それぞれ細胞内/外の結合部位に結合し,Na-Kポンプは活性化され,細胞内へのKの取り込みが亢進する.
成人の体内総K量は50〜55mEq/kg体重で,その98%がICFに存在し,骨格筋が最も多く,肝臓や赤血球などにも分布している.一方,残りのわずか2%がECFに存在する.この細胞内外のKの濃度勾配は,前述のNa-Kポンプによって形成され,Na:Kの交換比率は3:2のため,細胞内が細胞外に比べ陰性に荷電している.その活性化に伴って膜電位が深くなり(過分極という),逆にウアバインによりその活性が抑制されると膜電位が浅くなる(脱分極という)ことから,“起電性”と呼ばれている.また,ICFのK濃度は約140mEq/Lに対し,ECFのK濃度は3.5〜5.0mEq/Lで,この細胞内外のK濃度比(35〜40/1)によって,−60〜−90mVの細胞膜電位が形成され,神経・筋細胞や心筋細胞では興奮・収縮に,上皮細胞では細胞膜や細胞間隙を介した電解質輸送に重要な役割を担っている.また,ICFのKは,細胞内浸透圧の維持,細胞容積や細胞内pHの調節などにも重要である.一方,ICFのKの一部はKチャネルを介して受動的にECFに移行する.
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