連載 病院管理フォーラム
■医事法・9
医療水準と説明義務(違反)
植木 哲
1
1千葉大学法経学部法学科
pp.75-77
発行日 2008年1月1日
Published Date 2008/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541101104
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●説明義務の根拠
医師には診断・治療義務の他に説明義務が課されますが,それには2つの根拠があります(福岡地判1999年7月29日判時1728号84頁参照).1つは,医師が医療行為(医的侵襲行為)を行う場合,患者の身体への侵襲を伴うことから,それによる違法性を阻却させるため侵襲に対する承諾(同意)を得ておく必要があるからです.承諾が十分な情報の提供に基づく有効な同意であることの前提として,医師には納得のいく説明が必要となります.
2つ目は,人は生まれながらに自らの生き方を決定する権利(自己決定権)を有し,そのため自らの情報をコントロールできる必要があることです.特に病気に罹った人の場合,病気が人生を支配することもありますから,情報を得たうえでいかなる選択をするかが,その後の人生,生き方に大きな影響を及ぼすことになり,とりわけQOLの観点からその要請は高くなります.このような,患者の知る権利および自己決定権を確保するために医師に説明義務が課せられるのです.これは説明義務違反を不法行為責任として構成する際に,特に論じられる点です.
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