- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
肝細胞癌はC型肝炎ウイルスやB型肝炎ウイルスなどによる慢性肝炎,肝硬変などの慢性肝疾患を母地として発生する癌として知られている.このため,これらのウイルス性肝疾患を有する患者を対象にきめ細やかなスクリーニングが行われ,早期発見,早期診断が可能となった.肝癌診療ガイドラインでは,C型慢性肝疾患患者,B型慢性肝疾患患者,および非ウイルス性の肝硬変患者が肝細胞癌の定期的スクリーニング対象とされ,3〜6カ月間隔での腹部超音波検査を主体とし,腫瘍マーカー測定を用いたスクリーニングを行うよう推奨されている1).しかしながら,近年の抗ウイルス療法の発達に伴って,B型肝炎ウイルス感染については,核酸アナログ製剤によるウイルス制御が可能となり,C型肝炎ウイルス感染については直接的抗ウイルス薬(direct acting antivirals:DAA)によりほぼ100%治癒可能な疾患となった.このことにより,徐々にウイルス発癌の割合は減少傾向となっている.
一方で,非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease:NAFLD)や非アルコール性脂肪性肝炎(non-alcoholic steatohepatitis:NASH)などを母地とする非B非C型肝細胞癌の割合が増加している.これらの患者はほとんどの場合,医療機関で発癌サーベイランスがなされておらず,症状出現あるいは検診などで指摘されて初めて診断されることが多い.実際,このような場合は診断時にはかなり巨大な癌であったり,広範囲に進展していたりすることが多く,肝細胞癌特有の治療方法であるラジオ波焼灼療法(radiofrequency ablation:RFA)や肝動脈化学塞栓療法(transcatheter arterial chemoembolization:TACE)などの局所療法が適応にならないこともしばしばである.巨大な肝細胞癌では可能であれば外科的切除が選択されるが,切除不能となれば全身薬物療法が選択されることになる.このような背景から肝細胞癌においては薬物療法の重要性が高まってきている.
Copyright © 2023, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.