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はじめに
特発性間質性肺炎(idiopathic interstitial pneumonias:IIPs)は原因を特定しえない種々の間質性肺炎の総称であり,感染症や心不全を除外したうえでおさえておきたい代表的な肺疾患です.間質性肺炎は“間質”と呼ばれる肺胞隔壁や小葉間間質に炎症や線維化病変をきたす疾患の総称であり,原因としては,膠原病やサルコイドーシスなどの全身性疾患に付随して発症するもの,薬剤,職業,放射線治療の副作用,アレルギー,粉じん吸入やサプリメントなどの健康食品など,さまざまなケースが知られています.この間質性肺炎のなかで原因が特定できないものをIIPsと呼んでいます.2013年に報告された米国胸部疾患学会/欧州呼吸器学会(American Thoracic Society/European Respiratory Society:ATS/ERS)によるIIPsの指針によってIIPsのカテゴリーが示され,全IIPsの50%以上を占め,最も予後不良な疾患として知られる特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis:IPF)をはじめとする9疾患が含まれています(表1)1).わが国では2016年に日本呼吸器学会びまん性肺疾患診断・治療ガイドライン作成委員会による「特発性間質性肺炎診断と治療の手引き」が改訂2)され,2017年には新たなIPFの治療ガイドラインが発行されました.
現在の「特発性肺線維症の治療ガイドライン2017」3)をはじめ,過去のIPFの診断基準においては,自覚症状や肺機能検査の基準があり,自覚症状や肺機能の低下がなく,画像による所見だけではIPFの診断ができませんでした.しかし,最新のIPF国際ガイドラインでは,原因疾患がなくても,形態学的,放射線画像的に通常型間質性肺炎(usual interstitial pneumonia:UIP)パターンがある場合は,HR-CTだけでもIPFと診断可能となっています4).UIPパターンが確認できない場合には,外科的肺生検を行います.病理パターンは4つに分類され,HR-CTの3つの画像パターンと組み合わせて診断します.診断においては,画像・病理・臨床で議論〔多職種での議論をMDD(multi-disciplinary discussion)と呼んでいます〕を行って,診断を確定していくことが推奨されています(図14),表1).しかし,筆者は,呼吸機能検査はIPFの診断において重要な位置を占めており,画像所見と呼吸機能検査を組み合わせて診断を進めることが重要と考えています.本稿では,IIPsの病態・検査の特徴を概説します.
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