増刊号 心電図が臨床につながる本。
Ⅱ章 波形からみた心電図[1] 心臓の器質的疾患Plus
QRSの異常—QRS幅の延長
相澤 義泰
1
,
倉田 奈緒美
1
1慶應義塾大学医学部循環器内科
pp.1173-1178
発行日 2016年10月30日
Published Date 2016/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542200978
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Overview
洞結節で発生した心臓の電気的興奮は左右の心房を興奮させた後,房室結節およびHis束に伝播する.心筋の興奮は心室中隔で最初に始まり,右脚と左脚に分かれて中隔下部に伝播する.左脚は前枝と後枝に分かれ,最終的にはPurkinje線維に移行して左右の自由壁へ伝導する.また,心筋の脱分極は心内膜側から始まり心外膜側に伝わる.
心電図上のQRS波は左右の心室の脱分極を反映し,Q波の始めからS波の終わりまでを示す.QRS時間の正常値は0.10秒未満(洞調律時)であるが,加齢とともに延長する.一方,0.12秒以上であればQRS時間の延長とされる.脚ブロックの場合0.10秒以上0.12秒未満を不完全脚ブロック,0.12秒以上を完全脚ブロックと分類する.なお,Q波の始まりからR波の頂点までの時間をVAT(ventricular activation time)と呼び,心内膜側から始まった興奮が心外膜へ到達するまでの時間を表す.
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