映画に学ぶ疾患・21
「ヒアアフター」―臨死体験と脳の変化
安東 由喜雄
1
1熊本大学大学院生命科学研究部病態情報解析学分野
pp.1444
発行日 2011年11月15日
Published Date 2011/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542102847
- 有料閲覧
- 文献概要
映画「ヒアアフター」(クリント・イーストウッド監督)は冒頭の地震・津波のシーンが余りに衝撃的で,件の東日本大震災で被災した方々の心情を慮ってか,2月に封切られ,3月中旬,突然上映中止となった.しかし,この映画には伝えるべきメッセージが明確にあり,また語るべき映画だと思うので,この連載で紹介することにする.
マリーはパリで暮らす美人テレビキャスターで,テレビ局の看板の報道番組のアンカーマンとして活躍している.そんな彼女は,恋人とバカンスを過ごすため,東南アジアの美しい海岸沿いの,ある町に来ていた.海沿いの商店街で買い物をしていた彼女は,突然地震に遭遇し,大きな津波に呑みこまれる.波の中で必死にもがくうちに彼女は仮死状態になるが,幸いにも救い出され,人工呼吸の後生還する.しかしその時から,生死をさまよったときに見た映像が頭を離れなくなる.帰国後,彼女の精神状態に異変が起こる.番組登板中にもその映像が突如出現するようになり,次第にエスカレートしていく.ついに番組の進行にまで支障をきたした彼女は,しばらく休暇を取ることにする.どうして自分がそうなってしまったのかわからず途方に暮れるマリーであったが,自分が臨死状態の中で見たものは一体何であったのかを知ろうと蠢く.
Copyright © 2011, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.