Japanese
English
特集 現代における解離—診断概念の変遷を踏まえ臨床的な理解を深める
健忘と遁走の関連性—全生活史健忘の検討から
Reviewing the Relationship between Amnesia and Fugue : Through the Clinical Concept of Total Amnesia
大矢 大
1
Dai OYA
1
1医療法人おおやクリニック精神科
1Department of Psychiatry, Oya Clinic, Osaka, Japan
キーワード:
解離
,
dissociation
,
健忘
,
amnesia
,
遁走
,
fugue
,
診断分類
,
diagnostic classification
,
全生活史健忘
,
total amnesia
Keyword:
解離
,
dissociation
,
健忘
,
amnesia
,
遁走
,
fugue
,
診断分類
,
diagnostic classification
,
全生活史健忘
,
total amnesia
pp.1020-1025
発行日 2024年8月15日
Published Date 2024/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405207350
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抄録
DSMおよびICDの改訂は,解離症の診断分類に大きな変更をもたらした。解離性遁走は,DSM-5では,それまでのDSM分類とは異なり,解離性健忘の下位分類に位置づけられている。一方,ほぼ30年ぶりの改訂となるICD-11では,解離性健忘が,解離性遁走の有無によって二分されている。本稿では,健忘と遁走の位置づけについて,わが国独自の疾患単位である全生活史健忘の症例を通じて検討した。彼らは日々のストレスが累積し一定量を超えんばかりの差し迫った状況に追いやられ,自らの安らぐ居場所を失った状態にあって全生活史健忘を発症している。健忘であれ遁走であれ,病態の本質は同じであると理解できる。全生活史健忘の診断プロセスには,解離性遁走が解離性健忘の下位に移行したことの一因がみられることを指摘した。この解離性遁走の位置づけの変化は,曖昧さを含む解離概念を明確にする第一歩であり,この領域をより明確にしていくことが今後の課題であろう。
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