今月の表紙 帰ってきた真菌症・12
スエヒロタケ(Schizophyllum commune)
亀井 克彦
1
Katsuhiko KAMEI
1
1千葉大学真菌医学研究センター
pp.1620-1622
発行日 2009年12月15日
Published Date 2009/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542102199
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スエヒロタケ(Schizophyllum commune)は文字通りキノコ(真正担子菌)の一種である.キノコは真菌の仲間であるが,ヒトに感染あるいは定着するキノコは大変少ない.これまでにスエヒロタケやCoprinus cinereus(和名:ヒトヨタケ)など数種類が知られているに過ぎず1),大部分の症例はスエヒロタケによって占められている.スエヒロタケは決して珍しいキノコではなく,全国各地の朽ち木などで頻繁に見ることができる(図1)が,わが国では食用には用いない.
本菌による感染は,わが国では大部分がアレルギー性気管支肺真菌症(allergic bronchopulmonary mycosis;ABPM)であり,拡張した気管支内に本菌が定着して,Ⅰ型あるいはⅢ型のアレルギー反応により気管支粘液栓子(図2)を形成したり,無気肺,好酸球性肺炎,気管支喘息などを引き起こす(図3).気管支喘息の合併はアレルギー性気管支肺アスペルギルス症(allergic bronchopulmonary aspergillosis;ABPA)に比べると比較的少ない.欧米ではアレルギー性副鼻腔真菌症(allergic fungal rhinosinusitis;AFRS)の報告が多く2),また稀に侵襲性の感染を起こすこともある3).組織内の本菌の菌糸はアスペルギルス症に酷似しており,鑑別は容易でない(図4).本菌によるABPMは1989年に初めて報告されて以来4),急速に増加し,数多く報告されており5),臨床検査において遭遇する機会も多くなってきた.
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