今月の主題 脳磁図で何がわかるか?
話題
脳深部白質からの磁場信号の計測
木村 友昭
1
,
尾﨑 勇
2
,
橋本 勲
3
Tomoaki KIMURA
1
,
Isamu OZAKI
2
,
Isao HASHIMOTO
3
1東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科
2青森県立保健大学健康科学部理学療法学科
3金沢工業大学
キーワード:
脳白質
,
体性感覚誘発脳磁界
,
視床-皮質線維
Keyword:
脳白質
,
体性感覚誘発脳磁界
,
視床-皮質線維
pp.1079-1083
発行日 2009年9月15日
Published Date 2009/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542102068
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
1.はじめに
近年の非侵襲的な脳機能マッピングによって,ヒト大脳各領域の機能分化の様子が明らかになりつつある.一方で,個々の領域にモジュール化した独特の機能を求めることを,骨相学の再現と批判する向きもある1).むしろ各領域間の情報が双方向性に伝達され,全体がハーモニックに共鳴するプロセス自体にこそ,脳における情報処理の本質があると考えられる2).しかしながら,非侵襲的な脳機能マッピングの一つである脳磁図(magnetoencephalography;MEG)では,検出可能な脳内信号は主として大脳皮質内の錐体細胞の興奮性/抑制性シナプス後電位(EPSP/IPSP)のみであると考えられ,脳白質における活動電位を含め,錐体細胞以外を起源とする信号に関する検討はほとんどなされてこなかった.
しかし近年,測定システムや解析技術の発展により,MEG測定の対象は従来考えられていたよりも広がりをみせている.錐体細胞の近傍に位置する,抑制性介在ニューロン起源と思われる高周波振動がMEGで記録可能になっている3)ほか,小脳の活動に伴う磁場信号の報告4)も散見される.最近筆者ら5)は,正中神経電気刺激による体性感覚誘発脳磁場(somatosensory evoked fields;SEFs)を詳細に分析して,一次体性感覚野起源の初期成分出現に先立ち,刺激対側視床から大脳白質を上行するインパルスを反映する磁場信号を見いだした.本稿ではその概要について紹介する.
Copyright © 2009, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.