今月の主題 自然免疫と生体防御レクチン
話題
相補性ペプチドによる炎症の制御
今井 優樹
1
,
岡田 則子
1
Masaki IMAI
1
,
Noriko OKADA
1
1名古屋市立大学大学院医学系研究科病態医科学講座免疫学分野
キーワード:
相補性ペプチド
,
アナフィラトキシンC5a
,
炎症
Keyword:
相補性ペプチド
,
アナフィラトキシンC5a
,
炎症
pp.917-920
発行日 2008年8月15日
Published Date 2008/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101673
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1.はじめに
生物は,細菌やウイルスなどの微生物の体内への感染・侵入に対して,補体やToll-like receptor(TLR)に代表される自然免疫系の生体内防御機構を活性化させ,それらを体内からすばやく排除する仕組みを備えている.自然免疫がひとたび病原体の感染を感知すると,免疫応答に必須な炎症性サイトカインが産生され,生体内で炎症反応を引き起こし,免疫系にかかわる細胞を,感染局所に動員して病原体を排除する.しかし一方で,これらの防御反応の異常亢進により,アレルギーや自己免疫疾患が誘発されたり,重症化した場合には敗血症,播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation;DIC),多臓器不全(multiple organ failure;MOF)などの全身性炎症反応症候群(systemic inflammatory response syndrome;SIRS)病態へと進展する.現在まで,様々な敗血症の動物実験モデルが作られ,またいくつもの薬剤の臨床試験が行われてきたが,いまだに臨床の場における敗血症などの過剰な炎症反応に起因する致死的病態を改善する薬剤は登場していない.
本稿では過剰な炎症反応を制御することを目的に創出された相補性ペプチド(complementary peptide)について概説するとともに,相補性ペプチドの今後の可能性について述べる.
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