今月の主題 腎移植
話題
腎再生因子
門川 俊明
1
Toshiaki MONKAWA
1
1慶應義塾大学医学部内科
キーワード:
尿細管細胞
,
再生
,
幹細胞
Keyword:
尿細管細胞
,
再生
,
幹細胞
pp.813-815
発行日 2008年7月15日
Published Date 2008/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101653
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1.腎臓の再生医学の現状
腎臓の再生医学研究は,心臓や肝臓などの他の臓器に比べて遅れているといえる.それは,血液透析,腹膜透析,移植といった腎代替療法が実用化され良好な成績を上げていることに加え,腎臓という極めて精巧で複雑な臓器を再生することが困難であることによる.腎臓の機能単位であるネフロンは,糸球体毛細血管とそれに続く20種類以上の上皮細胞から構成されており,ネフロン丸ごとの再生は難しい.しかし,特定の細胞の再生は可能性があり,特定の細胞の再生だけでも治療効果が得られる可能性がある.
腎臓の再生能は弱いと考えられているが,明らかに修復・再生現象を認める病態が存在する.急性糸球体腎炎は可逆性の病変であり,傷害された糸球体は数週間のうちに再構築される.慢性の糸球体病変である糖尿病性腎症であっても,膵移植をすると組織変化が改善することが知られている.また,急性尿細管壊死においても,再生現象が認められ,脱落した尿細管細胞を補うべく新規に尿細管細胞が再生される.しかし,どの細胞を起源として尿細管細胞が再生されるのか,どのような因子が再生を決定づけるのかという問題は十分には解明されていない.近年,急性尿細管壊死において最も傷害を受ける皮髄境界部の近位尿細管S3セグメントに活発な再生能があることが知られるようになってきた.急性尿細管壊死後の再生現象は虚血再灌流や薬剤投与などの比較的作成しやすいモデルで観察できることもあり,腎臓の再生現象の研究に最も用いられている.
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