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1.はじめに
インフルエンザは,肺炎,クループ,気管支炎,中耳炎,Reye症候群などの随伴症状を伴う疾患である1).特にわが国では1990年代中頃より,インフルエンザの罹患に伴い脳症を発症する乳幼児が注目されるようになり,1998年以来厚生労働省研究班(班長:森島恒雄)が組織され頻度調査および病態の解明にあたっている2,3).
厚労省研究班では,インフルエンザ・シーズン終了後に全国の小児医療施設に対してインフルエンザ脳症発生の報告を依頼する方法で調査を行ってきたが,他の随伴症状とともに発生した頻度の実体は調査の対象とされていない.一方で,迅速診断キットが普及しインフルエンザの確実な診断が行われるようになり,診断を根拠にした抗インフルエンザ薬の処方が広範に行われるようになってきたが,その使用実態も不明のままである.特にオセルタミビルはわが国での使用頻度が著しく高く,その副作用についての注意喚起が行われるようになってきた.
他方で,世界的規模で鳥インフルエンザH5N1による人的被害の報告が増加しており,歴史的なインフルエンザ・パンデミックの経験から,H5N1ウイルスが新たにヒトへの感染性を獲得することが危惧される時代となった4).免疫を獲得していない人類は容易にパンデミックの犠牲になり,特に小児に最も被害の及ぶことが懸念されている.単にウイルスの浸潤だけでなく,併発症,特にわが国では脳症の発生が危惧され,あらかじめ調査を行い,パンデミックに対する対策を樹立しておく必要があることもインフルエンザに関する最近の課題である.
そこでわれわれは厚労省研究班を組み,インフルエンザ併発症の頻度,特に異常言動の実体について調査を行った.この調査研究の過程で明らかになったことを報告したい.
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