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1.インフルエンザの診断におけるブレークスルー
毎年冬季に流行を繰り返すインフルエンザの診断に関して,かつて臨床の現場では,急激な発症,高熱,全身症状,呼吸器症状,消化器症状などの特徴的な臨床症状,冬季に同様の症状を訴える患者の増加(流行の集団集積),各種サーベイランス情報,家族・施設・地域での発生,接触歴などの疫学情報から,臨床的な判断により診断せざるを得なかった.病原診断については,血清学的診断,ウイルス分離・同定によるウイルス学的診断による診断が行われていたが,いずれも確定診断までには時間を要するため,疫学的な解析には役立っても,個々の症例の診療方針を決定する診断法としてはあまり役には立っていなかった.そうしたなか,1998/1999シーズンに国内で初めて発売されたインフルエンザ迅速診断キットは,ベッドサイドや外来でのインフルエンザの迅速診断を可能とし,インフルエンザ診断における大きなブレークスルーとなった.当初はインフルエンザA型を検出する酵素免疫法(enzyme immunoassay;EIA)の試薬であったが,2001/2002シーズンにはA型とB型が鑑別可能になり,最近はより簡便なワンステップのイムノクロマト法を利用したキットが主流となっている.こうした迅速診断キットの普及は,ノイラミニダーゼ阻害薬等の抗インフルエンザ薬の開発とあいまって,臨床現場におけるインフルエンザ診療のかたちを大きく変えることに結びつくと同時に,施設内感染対策のうえでも極めて重要な役割を果たすこととなった.今後は感度の問題による偽陰性をいかに少なくすることができるかがポイントとなるであろう.一方,特殊な設備が必要ではあるが,高感度で迅速性の面でも数時間で診断可能であり,キットの設計によっては複数の呼吸器系病原微生物を同時検出することが可能なリアルタイムRT-PCR(riverse transcription-polymerase chain reaction)法もまた,インフルエンザを含む呼吸器感染症診断において今後のブレークスルーとなる可能性があると考えられる.
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