特集 遺伝子検査―診断とリスクファクター
3.遺伝子診断の実際
2) 神経・筋疾患
植田 光晴
1
,
安東 由喜雄
1
Mitsuharu UEDA
1
,
Yukio ANDO
1
1熊本大学大学院医学薬学研究部 病態情報解析学(臨床検査医学)
キーワード:
トリプレットリピート病
,
遺伝子診断
,
質量分析装置
Keyword:
トリプレットリピート病
,
遺伝子診断
,
質量分析装置
pp.1401-1414
発行日 2007年11月30日
Published Date 2007/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101429
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はじめに
神経・筋疾患領域には遺伝子異常がその病態に関与する疾患が多く,臨床症候や一般の検査項目のみでは診断が困難なものが少なくない.また,遺伝性疾患の原因遺伝子が不明であったころは,臨床症候や病理学的な特徴から疾患が分類されてきたが,近年の分子生物学の進歩により,多くの遺伝性神経筋疾患の原因遺伝子が明らかになった背景から,原因遺伝子による疾患の再分類が行われている.そのため,これらの疾患の診療には遺伝子検査が重要な意義を持つ.しかし,遺伝子検査が保険収載されている神経筋疾患はごく一部であり,その他の疾患に関しては非保険診療として外注もしくは研究機関などが先進医療や研究目的でこれらの検査を担っている.
一方,神経・筋疾患領域の遺伝子変異の形態は多様であり,対象疾患によっては解析に大変な労力が必要となる場合がある.また,遺伝子変異がどのように病気の発症機構と関連しているのか解明されていないものも少なくない.遺伝子診断は確実に再現性を持って行う必要があり標準化は重要な事項であることは言うまでもないが,前述の背景から個々の機関が独自の手法で行っているのが現状である.また,有効な治療法が存在しない疾患が多いため,遺伝子診断に際しては倫理面での配慮や遺伝カウンセリングの必要性が高く,患者や家族に不利益がないように配慮する必要がある.
本稿では遺伝子異常が関与する代表的な神経・筋疾患を概説し,これらの疾患で遺伝子診断が果たす役割について解説する.
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