今月の主題 白血球
話題
マクロファージのTLRシグナル
牟田 達史
1
Tatsushi MUTA
1
1東北大学大学院生命科学研究科生命機能科学専攻細胞構築統御学講座 細胞認識応答分野
キーワード:
自然免疫
,
マクロファージ
,
TLR
Keyword:
自然免疫
,
マクロファージ
,
TLR
pp.1096-1100
発行日 2007年10月15日
Published Date 2007/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101337
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
1.はじめに―哺乳動物における自然免疫の役割
われわれ哺乳動物が備えているいわゆる免疫系は,後天的に遭遇した異物に適応して獲得する生体防御機構であることから,適応/獲得免疫系と呼ばれる.一方,すべての多細胞生物が生まれながらにしてもつ生体防御機構が,自然免疫系である1).適応/獲得免疫系を備えている脊椎動物では,初期感染防御において補助的な役割を果たしている原始的な免疫系であると従来考えられてきた自然免疫系は,脊椎動物でも最初に体内に侵入した微生物を認識し,サイトカインや共刺激分子の発現を介して,獲得免疫系の活性化を誘導する極めて重要な役割を果たしていることが,近年の研究によって明らかになった2).ウサギに抗原を免疫し,抗血清を作成した経験をお持ちの方は,抗原を注射する前にアジュバントと混合したことを思い出していただきたい.結核菌の死菌などを含むアジュバントは,自然免疫系を刺激する役割をもっていたのである.
獲得免疫系は,抗原分子の詳細な構造を識別できるのが特徴であるが,この識別は,ゲノムの組み換えによって生じる膨大な種類の抗原受容体,抗体分子によって行われる.一方,自然免疫系では,ゲノムに含まれる有限の分子を用いて,数知れない異物の認識を行う必要がある.そのため,自然免疫系では,感染微生物の表面に存在する共通抗原の分子パターンを標的とした認識(パターン認識)によって生物学的評価を行う.近年,哺乳動物におけるパターン認識にかかわる受容体が発見されているが,なかでも研究が進んでいるのが,Toll-like receptor(TLR)である.
Copyright © 2007, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.